2021/10/27 03:05

■チラシの裏
日頃より、オススメのコーヒーを訊くと『オススメできないものは置いてないよ』だのほざいたり、
客が来店しているにも関わらずずっと後ろを向いていたり、コーヒーの抽出に夢中になっている、
およそ接客業とは思えない態度のコーヒー屋に対し、
『一度コンビニあたりでバイトして、最低限の接客スキルを習得してから開業しろ』
と至極真っ当(と思っている)なことを言っているが、実はこのあたりの話には元ネタがある。
REQSOの事業所から徒歩15分ほどの場所にあるとあるコーヒー屋。そこの偏屈店主がモチーフなのだ。
ぶっちゃけると、私はそういう接客をされても特段思うことはない。むしろ性格が悪い為に逆に楽しくなってしまう。
個人的には訊いてもいないことをベラベラしゃべる店の方が好きではない。
コーヒーとは、味だけではなく雰囲気も含めて初めて完成するものだからだ。
そういう意味で、店の雰囲気にさえあっていれば、多少偏屈でも嫌いではないのだ。
でも、コーヒー初心者が嫌な思いしてコーヒー嫌いになったら業界全体の損失なので、
相手をよく見て接客態度を決めた方がいいと思うな(真顔)

と話がやや脱線したが、はらちゃんのスマホに件の偏屈店主から着信があった。
(ヤバイ!見てないのを良いことに、好き放題ネタにして文句言ってるのがついにバレたか!?)
と内心ビビりつつも、自分は何も間違ったことを言っていないという自負がある為、毅然とした態度でかけ直した。
『どうも~、はらちゃんですぅ。先ほどお電話いただいたようですが、何かご用でしょうか?へへへ・・・』
近年稀に見る媚っぷりである。我ながら見事だ。
そんなはらちゃんに対し、偏屈店主は面倒くさそうに言う。
『SCAJ2021の招待状きてるよ。いる?』
※SCAJとは、年1回開催される国内最大の主に事業者向けのコーヒーイベントだ。
 競技焙煎・ドリップの大会や、商談・展示会の場としても重要らしい。

なんのことはない。あの偏屈店主は、はらちゃんのことを1人の焙煎士として見ているのだ。お、オヤジ・・・。
『欲しいです!近いうちにお店にお邪魔します!』

翌日に行った。
店内には別の常連さんもいたが、偏屈店主は我々にコーヒーを用意し、SCAJの話を始めた。
『豆なんか見ても楽しかねえけどよ。世界各国のボインのチャンネーがたっくさんいんだよ』
我々は話に釘付けである。
『お触りは!?』『撮影は!?』矢継ぎ早に質問する我々に対し、
偏屈店主は一言『絶対にウチの店の名前出すんじゃねえぞ』。
保身に走りやがった。
まぁそんな冗談はさておき、SCAJの招待状をいただいた。
『君みたいな"素人さん"でもまぁまぁ楽しいと思うよ』
こ、この偏屈クソじじい・・・!

この無駄に長い文章を読んだ方ならわかると思うが、はらちゃんはこのじじいのことがお気に入りなのである。
実際、焙煎士としては極まっている。何十年もコーヒー1本で商売しているだけあり、神業だ。
特に豆の良さを引き出した香り作りは、他の追随を許さないレベルだ。
これでもう少し接客がまともなら、もっと儲かると思うんだけどなぁ・・・と思ってしまうが。

そんなこんなで、SCAJ2021の招待状をもらったので、11月17日に来場予定です。楽しみだ!

■はじめに
前置きが長くなってしまいましたが、『コーヒーどれにする?』第2弾です。
今回は豆の選び方編です。

■前回のまとめと補足
1.苦味が強いコーヒーが飲みたかったら、深煎り(色が濃い)豆を選ぶ。
2.酸味が強いコーヒーが飲みたかったら、浅煎り(色が明るい)豆を選ぶ。
3.豆を挽く際に粗挽きにすると酸味が出やすく、細挽きにすると苦味が出やすい。
4.ドリップの際の湯温が低いと酸味が出やすく、高いと苦味が出やすい。
5.ドリップにかける時間が短いと酸味が出やすく、長いと苦味が出やすい。
※とりあえず1、2だけ覚えておきましょう。

■いよいよ豆選び
まずはREQSOで取り扱っているコーヒーの一覧を見てみましょう。

・ブラジル サントスNo.2#17/18
・コロンビア スプレモ
・エチオピア シダモG2
・グァテマラSHB
・ケニアAA
・ホンジュラスHG
・ラオスG1
・メキシコAL
・ベトナム ポリッシュ G1(ロブスタ種)

・エチオピア ゲレナ農園 ゲイシャG3 ナチュラル
・エチオピア シダモG1 タデGG農園 ナチュラル
・パプアニューギニア マウント・ミカエル ウォッシュド
・パプアニューギニア ハイランド・スウィート
・ルワンダ フイエマウンテン ウォッシュド
・パナマ クアトロ・カミノス農園 カトゥアイ
・ブラジル ショコラ サントアントニオ
・メキシコ サン・アントニオ アナエロビコ
・インドネシア マンデリン シナール
・タンザニア ンゴロンゴロAA++
・グァテマラ ミスティマウンテン
・ケニア レッドマウンテン
・ブラジル ベラ・ビスタ農園
・ペルー アンデス・ブルー
・エチオピア イルガチェフェG1 コチャレ
・ケニア マサイAA
・キューバ クリスタルマウンテン
・コロンビア エメラルドマウンテン
・ジャマイカ ブルーマウンテンNo.1
・コロンビア エル・ミラドール農園 ゲイシャ

多すぎてワケがわかりませんね。増やしすぎました。
とりあえず最初に注目してもらいたいのが、前半部分です。

・ブラジル サントスNo.2#17/18
・コロンビア スプレモ
・エチオピア シダモG2
・グァテマラSHB
・ケニアAA
・ホンジュラスHG
・ラオスG1
・メキシコAL
・ベトナム ポリッシュ G1(ロブスタ種)

ここです。
これらは『コモディティーコーヒー』と呼ばれ、
一般的にはシングルオリジン(特定の農園のコーヒー)ではないモノを差します。
広い地域から集められた豆を全て混ぜ、一定の条件(サイズなど)で寄り分けて出荷します。
様々な農園の豆が混ぜられる為、味が平坦化されます。その為、価格も安いです。

例えば『ブラジル サントスNo.2#17/18』ですが、これをわかりやすくしてみます。
ブラジル:言わずもがな生産国。
サントス:輸出の為、豆が集められる港。ちなみに南米最大。
No.2:等級。ブラジルの場合は300g当たりの欠点豆(カビや虫食い等)が4つ以下がNo.2。
#17/18:スクリーンサイズ(豆の大きさ)で、この場合横幅6.75~7mm以上ということ。

つまり、『ブラジル全域で収穫され、サントス港に集められた等級が高く大きめの豆』ということです。
このように、国名の後に特定の農園の名前が入っていないものは、基本的にコモディティーコーヒーと呼ばれ、
安価な豆として扱われます。

安価な豆というと品質が悪いように感じますが、実際にはそんなことはありません。
等級を下げれば当然品質は下がりますが、REQSOを始め殆どのコーヒー屋は、
コモディティーコーヒーの中でも最高等級を使用しています。
基本的に等級を下げると欠点豆が増えるのですが、欠点豆が増えれば増えるほど、
それを手作業で取り除く手間がかかり、商売どころではなくなっていきます。
個人を相手に商売するようなコーヒー屋ではそんなに工数を割けないので、
最初から等級が高い豆を買い、作業時間の短縮を図ります。
また、味が平坦化されている為、特定の農園の品質が下がっても、全体への影響が少ないのも利点です。
シングルオリジンではその農園の品質が低下すれば味が全く変わりますし、
不作で豆が収穫できなければ、そもそも提供すらできません。
そういう意味で、品質が安定し、入手もしやすいコモディティーコーヒーは非常に重要なものです。

■ちなみに
何故ブラジル サントスNo.2を使用するかというと、No.2が最高等級だからです。
たまに『No.1』はないの?と訊かれますが、ブラジルにNo.1という等級は存在しません。
これは『完璧なモノなど存在しない』という理念からきていて、
可能な限り完璧に近づけたモノという意味で、No.2とされます。
欠点豆が0な豆は理想ですが、農作物という点、人の手で管理されるという点で実現は不可能でしょう。

■それぞれのコモディティーコーヒーの解説(等級編)
REQSO取り扱うコモディティーコーヒーを1つ1つ解説します。
等級の話がメインになるので、なんとなく理解できた方は読み飛ばしてしまって大丈夫です。

・コロンビア スプレモ
 コロンビアの最高等級です。1つ下はエクセルソ。
 欠点数ではなく、サイズで決まり、スプレモはスクリーンサイズ17以上。
 
・エチオピア シダモG2
 シダモ地区の2番目のグレードで、欠点数4~12。G1は価格が高い上、
 欠点豆の数もG2とそんな変わらない(体感)為、1つ下げたG2を使用しています。
 『エチオピア イルガチェフェ』もありますが、これはシダモより更に範囲が狭い地区の豆です。

・グァテマラSHB
 グァテマラの最高等級で、『ストリクトリー・ハード・ビーン』の略です。
 標高1350m以上で収穫されたものがSHBとされます。
 店によっては『VSP』という独自の等級を使ってたりもします。
 
・ケニアAA
 ケニアの最高等級です。わかりやすい表現。
 スクリーンサイズ7.2mm以上がAAです。
 
・ホンジュラスHG
 ホンジュラスの最高等級で、『High Grown』の略。
 HGは標高900~1200mで収穫されたものです。

・ラオスG1
 正式な等級分けがなく、良い部分を輸出業者がG1としている(だった気がする)。
 今後の発展によっては、きちんとした等級が定められるかもしれません。
 
・メキシコAL
 メキシコの最高等級で、『アルチュラ・ラバド』の略。
 標高1400m以上で収穫されたモノ。
 ・・・なのですが、REQSOのメキシコALはシングルオリジンです。
 品質は良いのですが、詳細がわからない為、コモディティーとして扱っています。
 同業というか、はらちゃんのコーヒーの先生のご厚意で分けていただいた豆で、
 同業である以上、あまり細かく聞くのも野暮かなと思い、この扱いにしました。
 このあたりの話は後ほど詳しく書きます。
 
・ベトナム ポリッシュ G1(ロブスタ種)
 少し特殊というか、他の豆は『アラビカ種』、こちらは『ロブスタ種(カネフォラとも呼ばれる)』というモノで、別の種類です。
 ロブスタ種は病気に強く栽培しやすい反面、酸が殆ど精製されないため、酸味も甘味も香味も少ないです。
 苦味は非常に強く多く出る上、価格も安いので缶コーヒーなどに使われます。
 悪く言えば嵩増しに使われるので敬遠されがちですが、アイスコーヒーなど苦味を強く出したい時などに重宝します。
 美味しいブレンドを作る為に入荷していますが、人によってはロブスタを使う時点で低品質ととらえる為、
 REQSOで使用する際は、事前に了承を得るか『ロブスタ〇%使用』としっかり明記しています。
 "ロブスタ"という名前に引っ張られるわけではありませんが、ほんのりカニやエビのような生臭さがあります。
 
■ちなみに
コーヒーで良く聞く『モカ』とは、イエメン、エチオピアのコーヒーを表します。
この2国のコーヒーは、大部分がイエメンの『モカ港』から輸出されます。
ブラジルのサントス港と同じですね。
最近は主にイエメンのコーヒーがモカ(モカ・マタリ等)と呼ばれ、エチオピアがモカと呼ばれることは減ってきたように思います。
また、『カフェモカ』はエスプレッソにチョコレートシロップなどを混ぜたモノで、モカとは別物です。
モカにはチョコレートのようなフレーバーの豆があり、それを別の豆でも味わえるように考えられたのがカフェモカと言われています。
 
■各国のコーヒー豆の傾向
基本的にコーヒーの味は、生産国に左右されます。
理由として、乾季・雨季の有無や、1年を通しての気候、高山地の有無などが挙げられます。
特にコモディティーコーヒーは前述のように広い地域の豆が混ぜられるため、この傾向が強くなります。
もちろん特定の条件で栽培している農園もありますし、
豆のポテンシャルを最大限引き出すために焙煎を工夫した結果、この傾向から外れる例外も存在します。
例外を1つ1つ解説するのはまたの機会にして、今回は国別・REQSOでの焙煎の傾向を記します。

●苦味が強く、酸味が弱い
・ブラジル サントスNo.2#17/18
 本来はある程度酸味もあり、バランス系の筆頭といった豆ですが、苦味を際立たせる為、
 またナチュラル精製独特の香味を焙煎香でカバーする為、やや深めに焙煎します。
 (一般的な焙煎:ハイ~シティ REQSOでの焙煎:シティ~フルシティ)
 
・グァテマラSHB
 酸の含有率が非常に高い為、フルシティまできっちり焼いて特徴的なカラメルのような香味を引き出します。
 その為、苦味と甘味を強く感じます。
 (一般的な焙煎:フルシティ REQSOでの焙煎:フルシティ)

・ベトナム ポリッシュ G1(ロブスタ種)
 酸を殆ど含有しませんが、ロブスタ独特の臭みがあります。
 その為、かなり深めに焙煎してスモーキーにしています。
 (一般的な焙煎:? REQSOでの焙煎:フルシティ~フレンチ)

●苦味・酸味のバランスが整っている
・コロンビア スプレモ
 ブラジルと並んでバランス系の筆頭ですが、こちらはウォッシュドなのでクリーンな香味を持ちます。
 深煎りの入り口で止めればバランス系、さらに深く焼けば苦味と甘みが際立ちます。
 様々なアプローチができる為、特に指定がなければその時の気分でいろいろな味になります。
 (一般的な焙煎:シティ~フレンチ REQSOでの焙煎:シティ~フレンチ)
 
・ラオスG1
 バランスが良いと言えば聞こえが良いですが、どちらかというと特徴がないコーヒーという表現が近いです。
 その為、焙煎によりキャラクターを付与しないといけません。
 REQSOでは深煎りに焙煎し、やや薄めにドリップしてアメリカンコーヒーのように飲んでもらうことを想定しています。
 (一般的な焙煎:ハイ~フルシティ REQSOでの焙煎:シティ~フレンチ)
 
・ホンジュラスHG
 特徴がないことが逆に特徴となった、軽めに整ったコーヒーです。
 火の入り方が素直でどんな焙煎にも豆から寄せてきてくれますが、それ故に逆に悩みがちな豆です。
 基本的にはぴったりシティローストで止め、コーヒーらしさド真ん中を狙いに行くことが多いです。
 (一般的な焙煎:シティ REQSOでの焙煎:シティ)

●酸味が強く、苦味が弱い
・エチオピア シダモG2
 フルーティーの代表格です。甘い果実のような香りが特徴です。
 焼きすぎると香りが飛んでしまう上、雑味が出てくるので浅めの焙煎をします。
 といっても浅すぎても酸っぱすぎてキツイので、深煎りの入り口で止めます。
 フルーティーな香味、酸味が堪らないコーヒーです。
 (一般的な焙煎:シティ REQSOでの焙煎:シティ)
 
・ケニアAA
 鋭い酸味とスパイシーな香り、重めのコクが特徴です。
 酸が多いので深煎りにするとかなり甘くなるのですが、REQSOではレッドマウンテン、マサイAAで
 そのアプローチをしている為、コモディティーはやや浅めに仕上げます。
 酸味好きにはオススメのコーヒーです。
 (一般的な焙煎:シティ~フルシティ REQSOでの焙煎:シティ)

・メキシコAL
 口当たりは軽めですが、しっかりとした酸味を感じます。
 クセのないフレーバーなので、酸味系のコーヒーに挑戦してみたいという方にオススメです。
 (一般的な焙煎:シティ REQSOでの焙煎:シティ)

■ちなみに
REQSOではコモディティーとしての取り扱いはもうしていないので紹介してませんが、
インドネシアのマンデリンは苦いコーヒーとして人気です。
詳しくは次回のスペシャルティー・シングルオリジン編で解説しますが、
どの店で買ってもほぼ100%確定で苦味が強く、酸味が弱いコーヒーです。
どの豆が好みかわからず困ったら、とりあえずマンデリンを買っておけばいいレベルです。

■最後に
前置きのせいで無駄に長くなった為、今回はコモディティーコーヒーのみの紹介としました。
REQSOで取り扱っていないだけで他にもコモディティーコーヒーがありますので、入荷することがあれば都度紹介します。

お任せ100gガチャ200gガチャで数種類まとめて買ってみても楽しいですし、
味が安定しているので量り売り100gで1種類だけ買ってもいいと思います。
ぜひご注文ください。

また、ブレンドなので紹介していませんが、REQSO謹製『至高の作業用コーヒー』は酸味が少なく、
また苦味も強すぎないので非常に飲みやすいコーヒーです。
こちらのほうも、併せてよろしくお願いいたします。

次回はスペシャルティー、シングルオリジン編です。
この辺りはかなり沼というか、変態的なこだわりの話になると思いますので、お覚悟を(笑)




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